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企業活動の出発点は 経営理念 です。経営理念とは、企業が何のために存在し、どのような価値を社会に提供するかを示す根本的な考え方です。
経営理念に関連する概念は階層構造をなしています。
| 概念 | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| 経営理念 | 企業の存在意義・根本的な価値観 | 「技術で社会に貢献する」 |
| ビジョン | 将来あるべき姿・中長期の目標像 | 「2030年までにアジアNo.1」 |
| ミッション | 企業が果たすべき使命・役割 | 「安全な食品を届ける」 |
| バリュー | 行動指針・大切にする価値観 | 「誠実・挑戦・協働」 |
経営理念は企業文化の土台であり、従業員の意思決定や行動の拠りどころとなります。
具体例: トヨタ自動車は「モノづくりを通じた豊かな社会づくり」を理念に掲げ、全社員の行動指針としています。このように経営理念が浸透している企業では、現場レベルの判断にも一貫性が生まれます。
企業にはさまざまな法的形態があります。形態によって責任範囲・意思決定方法・利益配分が異なります。
| 形態 | 特徴 | 出資者の責任 |
|---|---|---|
| 株式会社 | 株式を発行して資金を調達。所有と経営の分離が可能 | 有限責任(出資額まで) |
| 合同会社(LLC) | 設立費用が安く、経営の自由度が高い | 有限責任 |
| 合名会社 | 社員全員が業務執行権と無限責任を持つ | 無限責任 |
| 合資会社 | 無限責任社員と有限責任社員で構成 | 無限/有限の混合 |
| NPO法人 | 非営利目的の法人。利益を構成員に分配しない | ― |
有限責任 とは、出資者が出資した金額の範囲内でのみ責任を負うことを指します。会社が倒産しても、個人の財産は保護されます。一方、無限責任 では会社の債務を個人の財産からも弁済する義務があります。
なぜ有限責任が重要か: 投資家が負うリスクを出資額に限定できるため、多くの人から広く出資を集めやすくなります。株式会社が最も普及している企業形態である理由は、この有限責任の仕組みによって資金調達が容易になる点にあります。
歴史的背景
17 世紀のオランダ東インド会社が世界初の株式会社と言われています。当時、アジアへの航海事業は失敗すれば船も積荷もすべて失う高リスク事業で、出資者は事業失敗時に個人の財産まで失う恐れがありました。有限責任 という仕組みが生まれたことで、出資者は出資額の範囲だけを失う覚悟をすればよくなり、リスクを抑えて多くの人から資金を集められるようになりました。これが現代の株式会社の原型で、世界中の経済成長を支える基盤になっています。
ステークホルダー(利害関係者) とは、企業活動に影響を与える、または影響を受けるすべての人や組織のことです。試験では「次のうちステークホルダーに該当しないものはどれか」のような問われ方をするため、各カテゴリがなぜステークホルダーに含まれるか を理解しておくと選択肢に迷いません。
| ステークホルダー | なぜ含まれるか |
|---|---|
| 株主 | 企業に出資し、配当や株価上昇という形で経済的影響を直接受ける |
| 従業員 | 給与や雇用条件で企業に依存し、企業文化や働き方に影響を受ける |
| 顧客 | 製品・サービスの品質や価格に影響を受け、企業の存続を購買で左右する |
| 取引先 (仕入先・販売先) | 取引関係を通じて経営状態の影響を受け、安定した取引を求める |
| 地域社会 | 工場の騒音・雇用創出・環境負荷など、企業活動が地域住民の生活に直接影響する |
| 行政機関 | 法令遵守・税金納付・許認可を通じて企業を管理監督する立場 |
| 金融機関 | 融資先として企業の業績や財務状況を評価し、貸し倒れリスクを負う |
| NPO / メディア | 社会的責任を監視し、世論形成を通じて間接的に影響を与える |
企業は特定のステークホルダーだけでなく、すべてのステークホルダーとバランスのとれた関係を維持することが求められます。
CSR (Corporate Social Responsibility) とは、企業が利益追求だけでなく、社会や環境に対する責任を果たすことです。20 世紀後半に公害・粉飾決算・労働問題などの企業不祥事が相次いだことを背景に、「企業も社会の一員として責任を負うべき」という考え方が広まり、現代では経営の必須テーマとなっています。
CSR の活動領域は大きく次の 4 つに分類されます。
| 領域 | 主な取り組み | 代表的なキーワード |
|---|---|---|
| 環境 | CO2 削減、再生可能エネルギーの利用、廃棄物削減 | グリーン IT・ゼロエミッション・環境アセスメント |
| 社会 | 地域貢献、人材育成、人権配慮、ダイバーシティ推進 | DE&I・ワークライフバランス・グラスシーリング |
| ガバナンス | コンプライアンス、内部統制、情報開示 | コーポレートガバナンス |
| 持続可能性 | 長期視点での企業価値創造 | SDGs・ESG |
DE&I (Diversity, Equity & Inclusion) は、CSR の社会領域で近年特に重視される考え方です。
関連用語として、ダイバーシティマネジメント (多様な人材を戦略的に活用する経営手法)、ワークライフバランス (仕事と生活の調和)、グラスシーリング (ガラスの天井: 女性やマイノリティの昇進を阻む見えない障壁) などがあります。これらは試験で「CSR の例として正しいもの」「次のうち適切な施策はどれか」のような選択肢に登場します。
試験に出る!
頻出DE&I 関連の用語 (ダイバーシティ / ワークライフバランス / グラスシーリング) は IT パスポートで頻出。「DE&I = Diversity, Equity & Inclusion」と「グラスシーリング = 見えない天井 (昇進を阻む障壁)」のセットで覚えましょう。
グリーン IT とは、IT 機器やデータセンターのエネルギー消費・CO2 排出量を抑える取り組みと、IT を活用して社会全体の環境負荷を削減する取り組みの両方を指します。経済産業省が 2008 年から推進しており、IT パスポートでも頻繁に出題されます。
| 取り組みの種類 | 例 |
|---|---|
| IT 自体の省エネ化 | データセンターの電力効率化、低消費電力 CPU の採用、仮想化による機器集約 |
| IT による環境貢献 | テレワークによる移動削減、ペーパーレス化、スマートグリッドによる電力最適化 |
関連用語の ゼロエミッション (廃棄物の排出をゼロにする運動)、エコファーム (環境保全型の農業)、環境アセスメント (環境影響評価) も出題範囲です。
グリーン IT と スマート農業を混同しない
スマート農業 は、農業に IT (センサ・ドローン・AI など) を活用して効率化や省力化を図る取り組みです。「IT を使う」点ではグリーン IT と似ていますが、目的が 環境負荷削減 ではなく 農業の生産性向上 であるため、グリーン IT には含まれません。試験では選択肢に並べて出題されるので注意しましょう。
ソーシャルビジネス とは、貧困・環境・教育などの社会的課題を 本業 (事業内容そのもの) で解決する企業活動です。利益追求と社会課題解決を両立させるビジネスモデルで、近年注目されています。
CSR と混同されやすいので、以下の対比で押さえましょう。
| 観点 | CSR | ソーシャルビジネス |
|---|---|---|
| 本業との関係 | 本業とは別の取り組み (寄付・ボランティア等を含む) | 本業そのものが社会課題の解決 |
| 収益性 | 必ずしも収益化を目的としない | 持続可能な事業として収益化を前提とする |
| 例 | 自社利益の一部を NPO に寄付 | 障害者向けに配慮した製品を製造・販売 |
CSR をさらに発展させた国際的な枠組みとして、SDGs と ESG があります。
ESG 投資が広まり、企業は財務情報だけでなく非財務情報の開示も求められるようになっています。
SDGs と紛らわしい略語の整理
試験では SDGs と紛らわしい国際機関・国際会議の略語が選択肢に登場します。
SDGs を問う問題で、これらが不正解選択肢として並ぶことが多いです。
コーポレートガバナンス (企業統治) とは、経営者の権力が暴走したり不正が起きたりしないよう、企業を健全に運営する仕組みです。具体的には、社外取締役の設置、内部統制システムの整備、株主への情報開示などが含まれます。
コーポレートガバナンスが弱いと、経営陣による不正会計・利益相反取引・独断的な意思決定が起きやすくなり、結果的に株主・従業員・顧客などすべてのステークホルダーが損害を被ります。CSR の「ガバナンス」領域や ESG の「G」と密接に関わる用語です。
BCP (Business Continuity Plan / 事業継続計画) とは、地震・洪水・火災・サイバー攻撃・パンデミックなどの 緊急事態が発生したときに、企業が中核となる事業を継続または早期復旧するための計画 です。リスク管理とコーポレートガバナンスの観点から、近年は中小企業も含め策定が強く推奨されています。
BCP には次の要素が含まれます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 想定するリスク | 地震・洪水・サイバー攻撃・パンデミックなど、事業を脅かす事象 |
| 中核業務の特定 | 緊急時にも継続または早期復旧すべき重要業務 |
| 目標復旧時間 (RTO) | 中核業務を再開するまでの目標時間 |
| 代替手段の確保 | バックアップシステム / 代替拠点 / 在宅勤務体制 |
| 訓練と見直し | 定期的な訓練と PDCA による継続的改善 |
BCP の策定・運用・改善を組織的に行う取り組みを BCM (Business Continuity Management / 事業継続マネジメント) と呼びます。BCP が「計画書」、BCM が「マネジメント活動全体」という関係です。
本書では BCP を 企業の社会的責任とリスク管理の観点で簡単に紹介 しています。BCP / BCM の詳細 (具体的な策定プロセス、IT 視点の事業影響度分析など) は ch08 (IT サービスマネジメント) で扱います。
ポイント
経営理念は企業の存在意義を示す最上位の概念で、ビジョン・ミッション・バリューへと具体化される。企業形態では株式会社の 有限責任 と 所有と経営の分離 が最重要。ステークホルダーは企業に関わるすべての利害関係者で、各カテゴリが「なぜ含まれるか」の理解が選択肢対策になる。CSR は環境・社会・ガバナンス・持続可能性の 4 領域で展開され、近年は DE&I・グリーン IT・ソーシャルビジネス・SDGs・ESG・コーポレートガバナンス が頻出。グリーン IT (環境負荷削減) と スマート農業 (農業の生産性向上) は混同に注意。SDGs と COP21・UNESCO・WHO の対比も押さえる。BCP (事業継続計画) は緊急時に中核業務を継続・早期復旧するための計画で、CSR・コーポレートガバナンスの一環として位置づけられる (詳細は ch08)。
用語
企業が目標を達成するには、計画的な 経営管理 が不可欠です。ここでは代表的なマネジメント手法を学びます。
PDCA サイクル は、業務を継続的に改善するためのフレームワークです。
| フェーズ | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| Plan(計画) | 目標を設定し、実行計画を立てる | 月間売上目標を設定 |
| Do(実行) | 計画に基づいて実施する | 営業活動を展開 |
| Check(評価) | 結果を測定し、計画との差異を分析 | 売上実績と目標を比較 |
| Act(改善) | 分析結果を踏まえて改善策を講じる | 次月の施策を修正 |
PDCA を繰り返すことで、業務プロセスが スパイラルアップ(螺旋的に向上) していきます。1回のサイクルで終わるのではなく、Act で得た改善策を次の Plan に反映し、サイクルを重ねるたびに品質や効率が螺旋階段を上るように高まっていくのがポイントです。
PDCA の Plan (計画) を立てるとき、経営者は 何を目指し、何を測るか を明確にする必要があります。そのために用いる指標が KGI / KPI / CSF です。
| 用語 | 正式名称 | 意味 |
|---|---|---|
| KGI | Key Goal Indicator (重要目標達成指標) | 組織の 最終的な目標 を定量的に示す指標。例: 年間売上 100 億円 |
| KPI | Key Performance Indicator (重要業績評価指標) | KGI を達成するための プロセス を測る中間指標。例: 月間問合せ件数、顧客単価 |
| CSF | Critical Success Factor (重要成功要因) | KGI を達成するうえで 特に重要な要素。例: 高品質なサポート体制、リピート率の向上 |
3 つの関係: CSF (=何が成功の鍵か) を特定し、KPI (=その鍵がうまく回っているかを示す指標) で日々モニタリングし、結果として KGI (=最終目標) の達成を目指す、という構造になります。
バランスト・スコアカード (BSC: Balanced Scorecard) は、財務指標だけに偏らず、企業活動を 4 つの視点から多角的に評価する経営管理手法です。1990 年代にカプランとノートンが提唱しました。
| 視点 | 内容 | 指標例 |
|---|---|---|
| 財務の視点 | 株主に対して財務的に成功しているか | 売上、利益、ROE |
| 顧客の視点 | 顧客にどう見られているか | 顧客満足度、市場シェア |
| 業務プロセスの視点 | 何の業務プロセスで卓越すべきか | リードタイム、不良品率 |
| 学習と成長の視点 | 変化と改善の能力をどう維持するか | 従業員満足度、研修受講数 |
BSC の特長は、財務の視点だけでなく非財務の 3 視点もバランスよく測る ことで、短期利益偏重を避け、企業の持続的な成長につなげる点です。
試験に出る!
頻出KGI = 最終目標、KPI = 中間指標、CSF = 成功要因 の 3 つの違いを押さえる。BSC では 財務 / 顧客 / 業務プロセス / 学習と成長 の 4 視点を区別する問題が頻出 (4 視点に「人事」「IT」など含まれない選択肢を選ぶ)。
企業活動を支えるのは 経営資源 です。代表的なのは「ヒト・モノ・カネ・情報」の 4 大経営資源 で、最近はこれに「時間」「知的財産」を加えて議論することもあります。
| 経営資源 | 例 | 特徴 |
|---|---|---|
| ヒト (人材) | 経営者、従業員 | 訓練や教育で価値を高められる 唯一の経営資源 |
| モノ (設備・商品) | 工場、機械、原材料、商品 | 物理的な制約があり、磨耗・劣化する |
| カネ (資金) | 自己資本、借入金 | 流動性が高く、調達手段が多様 |
| 情報 (ノウハウ・データ) | 顧客データ、ノウハウ、特許 | 共有しても減らないが、流出リスクがある |
経営資源には限りがあるため、どの資源にどれだけ配分するか が経営判断の中心になります。特に「ヒト」だけが教育で価値を伸ばせる資源であるため、HRM (次項) が経営の中核に据えられているのです。
OC (Organizational Culture / 組織文化) とは、組織内で共有される価値観・信念・行動パターンのことです。組織文化は戦略実行の土台となるため、「文化は戦略を朝食に食べる (Culture eats strategy for breakfast)」とまで言われます。
IT パスポートで頻出する組織形態は以下の 7 つです。
| 組織形態 | 特徴 | 所属部署数 | 適する場面 |
|---|---|---|---|
| ライン組織 | トップが直接指揮を執り、命令系統が一本化された最も基本的な組織形態 | 1 | 小規模組織・指揮命令の明快さが求められる場面 |
| 職能別組織 | 営業・製造・経理など機能ごとに部門を分ける | 1 | 安定した事業環境 |
| 事業部制組織 | 製品・地域・顧客などの単位で独立した事業部を置く | 1 | 多角化した大企業 |
| マトリクス組織 | 職能別と事業部制を組み合わせ、社員が両方に所属 | 2 | 複雑なプロジェクトや多国籍展開 |
| プロジェクト組織 | 特定の目的のために一時的に編成 | 1 (一時的) | 新製品開発など |
| カンパニー制組織 | 各事業部を独立した「仮想企業」とみなして経営 | 1 | 大規模事業の自律的運営 |
| 持株会社 (ホールディングス) | 複数の子会社の株式を保有して支配する親会社 | (会社単位) | 企業グループの再編・統治 |
試験で混同されやすいのが マトリクス組織 と 事業部制組織 です。決定的な違いは 所属部署の数 です。
カンパニー制組織 は、各事業部を独立した「仮想の会社 (カンパニー)」として運営する形態で、事業部制と子会社の中間 に位置します。事業部制よりも自律的に経営判断できる一方、法的には1つの会社のままです。
対して 持株会社 (ホールディングス) は、各事業を 法的に独立した子会社 に分け、親会社が株式を保有することで支配する形態です。「○○ホールディングス」という名前の会社が代表例です。
企業の経営層には、C (Chief = 最高責任者) で始まる英略語の役職が並びます。「CXO」と総称されることもあります。
| 役職 | 正式名称 | 意味 |
|---|---|---|
| CEO | Chief Executive Officer | 最高経営責任者。一般に経営者・社長を指す |
| COO | Chief Operating Officer | 最高執行責任者。日々の業務執行を統括 |
| CFO | Chief Financial Officer | 最高財務責任者。財務・経理を統括 |
| CIO | Chief Information Officer | 最高情報責任者。情報システムや IT 戦略を統括 |
| CTO | Chief Technology Officer | 最高技術責任者。技術戦略・研究開発を統括 |
CIO は 4 大経営資源の 「情報」 を担当する責任者として位置づけられます。
CIO と CTO を混同しない
CIO = 最高情報責任者 は社内の 情報システム や IT 活用戦略を統括する役職、CTO = 最高技術責任者 は 技術戦略・研究開発 を統括する役職です。両者は混同されやすく、試験では「情報システム部門の責任者は誰か」のような問われ方をするため、CIO = Information (情報システム)、CTO = Technology (技術) で覚えましょう。
IT パスポート試験では、事業・業務・システム という用語を以下の階層関係で扱います。試験作成者がこの定義を前提にしているため、用語の意味を正確に押さえておくことが大切です。
事業 ── 複数の「業務」で構成される (例: スマホ事業)
└── 業務 ── 手作業とシステムで実施される (例: 受注管理業務)
└── システム ── ハードウェアとソフトウェアで構成される (例: 受注管理システム)
├── ハードウェア
└── ソフトウェア
つまり、事業 > 業務 > システム の包含関係になります。「業務を IT 化する」とは、業務の中の手作業の部分をシステム (ハードウェア + ソフトウェア) で置き換えることを意味します。
試験に出る!
頻出CXO 系は IT パスポート頻出。特に CIO (情報) と CTO (技術) の対比、CEO (経営) / COO (執行) / CFO (財務) の役割整理を覚えましょう。組織形態では カンパニー制が頻出、他は不正解選択肢として登場することが多いです。
HRM (Human Resource Management) は、人材の採用・育成・評価・配置を戦略的に行う管理手法です。
人 (ヒト) は 訓練や教育で価値を高められる という点で、他の経営資源 (モノ・カネ・情報) と決定的に異なります。同じお金や設備を持っていても、それを使いこなす人材の能力次第で企業の業績は大きく変わります。だからこそ HRM は経営の中核に位置づけられます。
| 手法 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| OJT (On-the-Job Training) | 職場で実務を通じた教育訓練 | 上司や先輩が業務の進め方を指導しながら一緒に仕事をする |
| Off-JT (Off-the-Job Training) | 職場を離れた集合研修・セミナー | 新入社員研修、外部セミナー、e-ラーニング受講 |
| メンタリング | 経験豊富な先輩 (メンター) が後輩 (メンティ) を指導・支援 | 配属先以外の先輩がキャリア相談に乗る |
| コーチング | 対話を通じて相手の気づきや自発的行動を引き出す手法 | 上司が「どうすれば達成できると思う?」と問いかけて部下の答えを引き出す |
MBO と OKR の使い分け: MBO は目標の 100% 達成を前提とし、人事評価に直結します。一方、近年 IT 企業で普及している OKR は「背伸びして挑む目標」を設定する点が異なります。
人材育成にも IT 活用が広がっており、IT パスポートでは以下の用語が頻出します。
e-ラーニング は、PC・スマートフォン・インターネットなどの IT を使った学習方法です。Off-JT の一形態として、集合研修と組み合わせて使われることが多いです。
アダプティブラーニング は、学習者の 習熟度や苦手分野に応じて出題内容や難易度を最適化 する学習手法です。AI などの IT 技術を活用してデータに基づいた個別最適化を行います。従来の教師の感覚に頼った指導と比べ、客観的なデータで学習効率を高められる点が特徴です。
本サービス rootwise も、SRS (間隔反復) と弱点分析によって学習者ごとに出題を最適化するアダプティブラーニングのプラットフォームです。
HR テック (HRTech) は、Human Resource (人材) と Technology (技術) を組み合わせた造語で、HRM のうち AI・IoT・ビッグデータなどの IT を活用する手法を指します。具体例として、AI による採用候補者のスクリーニング、勤怠データの自動分析、社員の離職リスク予測などがあります。
類似の造語には FinTech (Finance + Technology / 金融 × IT) や EdTech (Education + Technology / 教育 × IT) などがあり、業界 × IT の組み合わせで用語が量産されています。
試験に出る!
頻出HR テック / FinTech / EdTech のような「業界 × Technology」の造語は IT パスポートで頻出。HR テック = HRM + IT、FinTech = 金融 + IT、EdTech = 教育 + IT とパターンで覚えましょう。アダプティブラーニングや e-ラーニングは EdTech の代表例です。
リーダーシップ には複数の理論があります。
| 理論 | 内容 |
|---|---|
| PM理論 | P機能(目標達成)とM機能(集団維持)の2軸でリーダーシップを分類 |
| SL理論 | 部下の成熟度に応じてリーダーシップスタイルを変える(状況対応型) |
| サーバントリーダーシップ | リーダーがまず奉仕し、その後に導くスタイル |
ナレッジマネジメント は、組織内の知識や経験を共有・活用する手法です。野中郁次郎の SECI モデル が代表的です。
ポイント
経営資源は ヒト・モノ・カネ・情報 の4つで、ヒトだけが教育で価値を高められる。組織構造では マトリクス組織 (社員が2つの部署に所属) と 事業部制組織 (1部署所属) の対比、カンパニー制 (仮想の会社) と 持株会社 (法的に独立した子会社) の対比が頻出。経営層の役職では CEO (経営) / CIO (情報) / CTO (技術) が中心で、CIO と CTO の違いに注意。事業 > 業務 > システムの階層関係も試験前提となる。PDCA サイクルは Plan → Do → Check → Act の継続的改善。Plan で KGI (最終目標) / KPI (中間指標) / CSF (成功要因) を設定し、バランスト・スコアカード (BSC) で 財務・顧客・業務プロセス・学習と成長 の 4 視点から多角的に評価する。HRM では OJT / Off-JT / MBO / OKR が頻出。e-ラーニング / アダプティブラーニング / HR テックなど IT 活用の人材育成も最近の頻出論点。
用語
財務諸表 は企業の経営状態を数値で示す報告書です。学校の成績表が学習成果を示すように、財務諸表は経営者の経営成果を示す「経営者の成績表」と言えます。これを読めば、その企業がいま健康なのか、どのように利益を生み出しているのかが分かります。
財務諸表は単一の書類ではなく、財務三表 と呼ばれる3つの書類の総称です。
| 財務諸表 | 略称 | 何が分かるか | 例え |
|---|---|---|---|
| 貸借対照表 | B/S | ある時点の財政状態(資産・負債・純資産) | 企業の「体格」 |
| 損益計算書 | P/L | 一定期間の経営成績(収益・費用・利益) | 企業の「成績表」 |
| キャッシュフロー計算書 | C/F | 一定期間の現金の流れ | 企業の「血液の流れ」 |
財務諸表は実は4つ
日本の会計基準では、上記の3つに加えて 株主資本等変動計算書 も財務諸表に含まれます。ただし IT パスポート試験では出題されないため、本書では3つに絞って解説します。
貸借対照表は「ある時点」の財政状態を示します。左側(借方)に 資産、右側(貸方)に 負債 と 純資産 を記載し、必ず左右が一致します。
資産 = 負債 + 純資産
この等式が成立するため、左右が釣り合うことから「バランスシート」と呼ばれます。
試験では細分化された科目だけでなく、貸借対照表全体を表す上位概念も問われます。
| 用語 | 指す範囲 | 性質 |
|---|---|---|
| 総資産 | 左側全体(資産の部) | 企業が持っている全財産 |
| 他人資本 | 右上(負債の部) | 返済が必要なお金 |
| 自己資本 | 右下(純資産の部) | 返済する必要がないお金 |
| 総資本 | 他人資本 + 自己資本(右側全体) | 企業が調達した全資金 |
資産合計と負債・純資産合計が一致する性質から、総資産 = 総資本 が常に成立します。
資産と負債は、現金化や返済までの期間で 流動 と 固定 に分類されます。
| 区分 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 流動資産 | 1年以内に現金化できる資産 | 現金、売掛金、棚卸資産 |
| 固定資産 | 長期にわたって使用する資産 | 建物、機械、土地、特許権 |
| 流動負債 | 1年以内に返済すべき負債 | 買掛金、短期借入金 |
| 固定負債 | 返済まで1年超の負債 | 長期借入金、社債 |
| 純資産 | 資産から負債を引いた残り(自己資本) | 資本金、利益剰余金 |
X年3月31日
| 勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 資産の部 | 負債・純資産の部 | ||
| 流動資産 | 1,000,000 | 流動負債 | 700,000 |
| 現金及び預金 | 500,000 | 買掛金 | 400,000 |
| 売掛金 | 300,000 | 短期借入金 | 300,000 |
| 棚卸資産 | 200,000 | 固定負債 | 800,000 |
| 固定資産 | 4,000,000 | 長期借入金 | 800,000 |
| 建物 | 1,500,000 | 純資産 | 3,500,000 |
| 土地 | 2,000,000 | 資本金 | 2,500,000 |
| 特許権 | 500,000 | 利益剰余金 | 1,000,000 |
| 資産合計 | 5,000,000 | 負債・純資産合計 | 5,000,000 |
試験に出る!
重要!頻出資本金の位置 は IT パスポートで頻出の論点です。資本金は株主が企業に出資したお金であり、貸借対照表の 純資産の部(自己資本) に分類されます。負債の部や流動資産と取り違えないよう注意しましょう。
損益計算書は「一定期間(通常1年間)」の経営成績を示します。収益から費用を段階的に差し引き、5種類の利益を算出するのが特徴です。
単に計算式を覚えるだけでなく、各利益が 企業の何を物語っているか を理解すると、応用問題でも迷いません。
| 利益の種類 | 計算式 | 何を表すか |
|---|---|---|
| 売上総利益(粗利) | 売上高 − 売上原価 | 商品そのものの稼ぐ力(商品力) |
| 営業利益 | 売上総利益 − 販管費 | 本業で稼ぐ力(本業の競争力) |
| 経常利益 | 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用 | 本業+副業を合わせた稼ぐ力(企業全体の競争力) |
| 税引前当期純利益 | 経常利益 + 特別利益 − 特別損失 | 税金を引く前の利益 |
| 当期純利益 | 税引前当期純利益 − 法人税等 | 最終的に手元に残る利益 |
販管費(販売費及び一般管理費) には、人件費・広告宣伝費・減価償却費・地代家賃などが含まれます。
大切なのは「今期に利益が出ているかどうか」だけではなく、その利益がどのようにして生み出されたか です。例えば自社ビルの売却益で当期純利益が大きくなっても、本業(営業利益)が赤字なら、経営者の手腕が高いとは言えません。
X年4月1日〜X+1年3月31日
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売上高 | 5,000,000 |
| 売上原価 | 3,000,000 |
| 売上総利益 | 2,000,000 |
| 販売費及び一般管理費 | 1,200,000 |
| 営業利益 | 800,000 |
| 営業外収益 | 50,000 |
| 営業外費用 | 30,000 |
| 経常利益 | 820,000 |
| 特別利益 | 10,000 |
| 特別損失 | 30,000 |
| 税引前当期純利益 | 800,000 |
| 法人税等 | 240,000 |
| 当期純利益 | 560,000 |
学習のコツ
5つの利益には似た漢字が並び、暗記に苦しむ学習者が多い領域です。各語の意味を押さえると一気に整理できます。
つまり「経常利益」は 毎年発生する通常の利益、「特別利益/特別損失」は その期だけの臨時の損益 という対比で覚えられます。
費用は5種類に分類される
損益計算書では費用を 売上原価 / 販管費 / 営業外費用 / 特別損失 / 法人税等 の5つに分類します。前節で扱った「変動費・固定費」の2分類とは異なる切り口で、企業の成績を多面的に分析するため の分類です。例えば、本業の費用(売上原価+販管費)と本業外の費用(営業外費用+特別損失)を分けて見ることで、利益の出どころを正確に把握できます。
試験に出る!
頻出5つの利益の計算式は IT パスポート最頻出論点の 1 つです。
キャッシュフロー計算書は 一定期間の現金(キャッシュ)の出入り を記録した書類です。「キャッシュ」は現金、「フロー」は流入・流出を意味します。
損益計算書で利益が出ているのに倒産してしまう企業があります。これを 黒字倒産 といいます。
多くの企業では、商品が売れても代金は翌月末などに後払いで受け取ります。この未回収の代金を 売掛金 といいます。損益計算書では売掛金も「売上=利益」として計上されるため、帳簿上は黒字です。しかし手元に現金が入ってこないと、仕入代金や借入金の返済ができず、資金繰りが破綻します。これが黒字倒産のメカニズムです。
損益計算書だけを見ていると黒字倒産のリスクは発見できません。現金の動きを追えるキャッシュフロー計算書 こそが、企業の本当の体力を映す書類です。
キャッシュフロー計算書では、現金の出入りを以下の3つの活動に分けて記録します。
| 活動区分 | 内容 | プラスのとき | マイナスのとき |
|---|---|---|---|
| 営業活動 CF | 本業による現金の出入り | 本業が好調 | 本業が不調 |
| 投資活動 CF | 設備投資・有価証券の売買 | 株や設備を売却して現金が増えた | 将来のために積極的に投資している |
| 財務活動 CF | 借入・返済・配当金の支払い | 銀行などから資金を調達した | 借入金や配当を返済している |
健全な成長企業では、営業 CF はプラス、投資 CF はマイナス、財務 CF はマイナス(または成長フェーズではプラス) のパターンになることが多いです。
財務諸表の数値を組み合わせると、企業の体質を1つの数値で表す 財務指標 が得られます。試験では特に以下の5つが頻出です。
| 指標 | 計算式 | 意味 |
|---|---|---|
| ROE(自己資本利益率) | 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100 | 株主の出資に対する利益の効率 |
| ROA(総資産利益率) | 当期純利益 ÷ 総資産 × 100 | 全資産を使った利益の効率 |
| 総資本回転率 | 売上高 ÷ 総資本 | 資本をどれだけ効率よく売上に変えたか(単位: 回転) |
| 流動比率 | 流動資産 ÷ 流動負債 × 100 | 短期の支払い能力(200%以上が理想) |
| 自己資本比率 | 自己資本 ÷ 総資本 × 100 | 財務の安定性(高いほど安定) |
流動比率が200%以上で理想とされる理由: 流動負債の2倍の流動資産があれば、仮に売掛金の回収が遅れたり棚卸資産がすぐに現金化できなくても、短期的な支払いに十分な余裕があるためです。100%を下回ると、短期の負債を返済できないリスクが高まります。
ROE と ROA の使い分け: ROE は「株主が出資したお金をどれだけ効率的に利益に変えたか」を見る株主目線の指標です。一方 ROA は「企業が持つ全資産をどれだけ効率的に利益に変えたか」を見る経営全体の効率指標です。借入金を増やすと ROE は上がりやすいですが、ROA は負債も含めた全資産で計算するため、本質的な経営効率を測れます。
総資本回転率の読み方: 売上高が200百万円・総資本が100百万円なら、総資本回転率は 2 回転です。同じ資本でより大きな売上を上げる企業ほど、効率よく資本を活用していると言えます。
試験に出る!
頻出財務指標の計算式と意味の対応は頻出です。特に ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100 と 自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資本 × 100 は分母(自己資本)が同じで紛らわしいので、分子(利益か自己資本か)に注目して区別しましょう。
ポイント
財務三表は B/S(財政状態)・P/L(経営成績)・C/F(現金の流れ)。B/S の基本等式は「資産 = 負債 + 純資産」で、総資産 = 総資本が常に成立する。P/L は売上高から段階的に5つの利益を計算し、各利益は商品力・本業の競争力・企業全体の競争力などを物語る。損益計算書だけでは黒字倒産のリスクを発見できないため、現金の流れを追う C/F 計算書が必要になる。財務指標では ROE・ROA・自己資本比率・総資本回転率・流動比率が試験頻出。資本金は純資産に分類されることも頻出の引っかけ論点。
用語
管理会計 は、経営者が意思決定を行うための内部向けの会計です。財務会計(外部報告用)とは異なり、法的な義務はありませんが、経営判断に不可欠な情報を提供します。
管理会計の中核となるのが 損益分岐点分析(CVP 分析) です。
損益分岐点を扱う前に、計算問題で繰り返し登場する 5 つの用語を押さえましょう。これらは問題文や選択肢に頻出するので、用語の意味を即座に思い出せる状態にしておくと有利です。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 売上 | 商品やサービスを販売して得た金額 |
| 費用 | 商品やサービスを売るために必要な金額 (変動費 + 固定費) |
| 変動費 | 販売数に比例して増える費用。原材料費・販売手数料など |
| 固定費 | 販売数に関係なく一定額発生する費用。家賃・正社員の人件費・減価償却費など |
| 利益 | 売上 − 費用 |
計算問題ではこれら 5 つの言葉が問題文や選択肢に必ず出てきます。「売上」「費用」「利益」をスラッと使えるようにしておくのがコツです。
試験に出る!
頻出売上・費用・変動費・固定費・利益 は損益分岐点系の問題文と選択肢に必ず登場する基本用語。意味を即答できる状態にしておきましょう。
費用は売上高に連動するかどうかで2つに分類されます。
| 区分 | 特徴 | 例 |
|---|---|---|
| 固定費 | 売上に関係なく一定額発生する費用 | 家賃、正社員の人件費、減価償却費 |
| 変動費 | 売上に比例して増減する費用 | 原材料費、販売手数料、外注費 |
実際の費用には固定費と変動費の両方の性質を持つ 準変動費(基本料金 + 従量料金の電気代など)もありますが、分析上はどちらかに分類します。
損益分岐点(BEP: Break-Even Point) とは、売上高と総費用がちょうど等しくなる点、つまり 利益がゼロ になる売上高のことです。
限界利益 と 限界利益率 を使って計算します。
| 用語 | 計算式 |
|---|---|
| 限界利益 | 売上高 − 変動費 |
| 限界利益率 | 限界利益 ÷ 売上高 |
| 変動費率 | 変動費 ÷ 売上高(= 1 − 限界利益率) |
| 損益分岐点売上高 | 固定費 ÷ 限界利益率 |
なぜ固定費を限界利益率で割るのか: 限界利益とは、売上から変動費を引いた残りであり、固定費の回収に充てられる金額です。限界利益率は「売上1円あたり何円が固定費回収に回るか」を表します。したがって、全固定費を回収するのに必要な売上高は「固定費 ÷ 限界利益率」で求められます。
計算例:
公式 (固定費 ÷ 限界利益率) は最短で答えを出せますが、「なぜそうなるか」を理解しづらい面があります。中学数学で学ぶ 一次関数 y = ax + b を使って構造から考えるアプローチも併せて押さえると、応用問題でも迷いません。
販売数を x、金額を y とすると、売上と費用は次の 2 本の直線で表せます。
| 直線 | 式 | 一次関数 y = ax + b における意味 |
|---|---|---|
| 売上の直線 | y = (販売単価) × x | 傾き = 販売単価、切片 = 0 |
| 費用の直線 | y = (変動費単価) × x + (固定費) | 傾き = 変動費単価、切片 = 固定費 |
損益分岐点 は、この 2 本の直線が交わる点 (=売上 = 費用となる x の値) です。
例: ある弁当販売事業で、販売単価 600 円、弁当 1 個あたりの材料費 (変動費) 240 円、固定費 (店舗家賃 + 正社員給与) 月 90,000 円。月の損益分岐点となる販売数を求めよう。
ステップ 1: 売上の式を立てる → y = 600x
ステップ 2: 費用の式を立てる → y = 240x + 90,000
ステップ 3: 連立方程式として解く → 600x = 240x + 90,000
ステップ 4: x について整理する → 360x = 90,000 → x = 250 (個)
販売数 250 個が損益分岐点。1 個あたり 600 円なので、損益分岐点売上高は 600 × 250 = 150,000 円 です。
限界利益率 = (600 − 240) ÷ 600 = 0.6 (60%)
損益分岐点売上高 = 90,000 ÷ 0.6 = 150,000 円 で同じ結果になります。
学習のコツ
両方のアプローチに使い分けがあります。
| アプローチ | メリット | 適する問題 |
|---|---|---|
| 公式 (固定費 ÷ 限界利益率) | 即座に解ける | 標準的な損益分岐点問題 |
| 連立方程式 (売上線 = 費用線) | 構造から考えられて記憶が定着しやすい | 安全余裕率・営業利益・変動費率など派生計算問題 |
中学数学の一次関数 (y = ax + b) で 傾き = 変動費単価、切片 = 固定費 という対応を押さえれば、グラフ問題にも対応できます。
計算問題が苦手な人は、まず本節を後回しにして他の論点から進めるのも 1 つの手です。出題範囲は広く、ここに時間をかけすぎて他の頻出論点を取りこぼすほうが得点的に損になることもあります。一通り他を学んでから戻ってくる戦略も有効です。
建物・機械・車両のように、長期にわたって使う 固定資産 は、購入した年に全額を費用計上すると、その期だけ大幅な赤字が出てしまい、企業の本当の経営成績がわかりにくくなります。そこで、固定資産の取得費用を 耐用年数 (使用できる年数) にわたって毎期少しずつ費用化する仕組みが 減価償却 です。
減価償却の目的は、固定資産が事業に貢献する期間と費用を対応させ、各期の利益を正確に表すことにあります。減価償却で計上される費用を 減価償却費 といい、損益計算書では販管費の一部として計上されます。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 取得原価 | 固定資産を購入したときの金額 (購入代金 + 据付費など) |
| 耐用年数 | 固定資産が事業で使用できる年数 (税法で資産の種類ごとに定められている) |
| 残存価額 | 耐用年数経過後の見込み価値。現行の税制ではゼロとすることが多い |
| 減価償却費 | 各期に費用化する金額 |
IT パスポートで頻出する 2 つの計算方法を押さえましょう。
| 方法 | 計算式 | 特徴 |
|---|---|---|
| 定額法 | (取得原価 − 残存価額) ÷ 耐用年数 | 毎年同額 を費用化。シンプル |
| 定率法 | (取得原価 − 既存の減価償却累計額) × 償却率 | 初期に多く、後年になるほど少なく費用化 |
定額法の計算例
取得原価 60 万円、耐用年数 6 年、残存価額 0 円のサーバ機器を定額法で減価償却する場合:
1 年あたりの減価償却費 = (600,000 − 0) ÷ 6 = 100,000 円
毎年 10 万円ずつ費用計上し、6 年で帳簿価額が 0 になります。
定率法のイメージ
定率法では、毎期「残っている帳簿価額 × 償却率」で計算するため、初期の費用が大きく、後年は小さくなります。新しい設備が初期に多く価値を生むのに合わせて費用も大きく取る考え方です。
試験に出る!
頻出減価償却の計算問題は IT パスポート頻出。定額法 = 毎年同額、定率法 = 初期多く後年少なく がポイント。定額法の計算は (取得原価 − 残存価額) ÷ 耐用年数 で求められます。
ABC(Activity-Based Costing) は、製品やサービスの原価を「活動(アクティビティ)」 単位で正確に把握する手法です。
従来の原価計算では製造間接費を生産量に比例して配賦していましたが、ABC では実際に発生した活動ごとにコストを割り当てます。
| 比較項目 | 従来の原価計算 | ABC |
|---|---|---|
| 配賦基準 | 直接作業時間や生産量 | 活動(検査回数・段取り回数等) |
| 精度 | 間接費が多いと不正確 | 間接費が多くても正確 |
| 適する場面 | 少品種大量生産 | 多品種少量生産 |
ABC を活用すると、どの製品が本当に利益を生んでいるかを正確に把握でき、不採算製品の見直しや価格設定の改善につながります。
ABC (Activity-Based Costing) と ABC 分析を混同しない
本節の ABC = Activity-Based Costing は活動単位で原価を配賦する 原価計算手法 です。一方、ch01-sec05 (データ分析と業務改善ツール) で扱う ABC 分析 は、パレート図でデータを A/B/C の 3 群に分類する 重要度ランク分け手法 で、まったく別物です。同じ「ABC」でも文脈で判断しましょう。
ポイント
費用は 固定費 (売上に関係なく一定) と 変動費 (売上に比例) に分類される。損益分岐点 (BEP) は売上 = 費用となる点。公式: 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率 は必ず計算できるようにする。一次関数 y = ax + b で考えると、売上線 (y = 単価 × x) と 費用線 (y = 変動費単価 × x + 固定費) の交点が BEP。売上・費用・変動費・固定費・利益 は問題文と選択肢に頻出。減価償却 は固定資産の取得費用を耐用年数にわたって費用化する仕組み。定額法 = 毎年同額、定率法 = 初期多く後年少なく。ABC (原価計算) と ABC 分析 (重要度ランク分け、sec05) の混同注意。
用語
経営者は「不良品の原因はどこにあるか」「どの商品に注力すべきか」「来期の売上はいくらになりそうか」といった意思決定を、感覚ではなく 数値データに基づいて 行う必要があります。そのために用いるのが、本節で扱う データ分析・業務改善ツール です。
試験で扱われる主なツールは次のとおりです。
| ツール | 主な用途 | 形状 |
|---|---|---|
| パレート図 | 重要度の高い項目を特定する | 棒グラフ+累積折れ線 |
| ABC 分析 | データを A・B・C の3群に分類して優先順位を決める | パレート図ベース |
| ヒストグラム | データのばらつき・分布を見る | 区間ごとの棒グラフ |
| 散布図 | 2変数の関係性 (相関) を見る | 点の集まり |
| 回帰分析 | 過去データから将来を予測する | 散布図+回帰直線 |
| レーダーチャート | 複数項目の総合バランスを見る | 放射状の多角形 |
パレート図 は、データを大きい順に並べた 棒グラフ と、累積比率を示す 折れ線グラフ を1つに重ねた図です。「重要な少数の項目が全体の大部分を占める」という 80:20 の法則 (パレートの法則) を視覚化するために使われます。
例: 工場で不良品の原因を集計したところ、原因 A・B だけで全体の 80% を占めていた → 原因 A・B の対策を優先すべき、という意思決定ができます。
ABC 分析 はパレート図を使って、データを次の3群に分類する手法です。
| ランク | 累積比率の目安 | 扱い |
|---|---|---|
| A 群 | 上位 ~70% | 最重要。優先的に管理する |
| B 群 | 70~90% | 中位。標準的に管理する |
| C 群 | 90~100% | 重要度低。簡略管理でよい |
例えば商品売上の ABC 分析を行えば、A 群の商品に在庫管理コストを集中させ、C 群は簡素な管理に切り替える、といった経営判断ができます。
ABC 分析と「ABC: Activity-Based Costing」を混同しない
本節の ABC 分析 はパレート図を使ったランク分け手法です。これとは別に、ABC = Activity-Based Costing (活動基準原価計算) という用語があり、こちらは ch01-sec04「損益分岐点と管理会計」で扱う 原価計算手法 です。同じ「ABC」でも全く別の概念なので、文脈で判断しましょう。
試験に出る!
頻出パレート図は IT パスポート最頻出のグラフ手法の 1 つ。
散布図 は、2 種類のデータの関係性を点で表すグラフです。横軸と縦軸にそれぞれ別の項目をとり、データを点として打つことで、項目間の 相関関係 が一目で分かります。
相関は次の3パターンに分類されます。
| 相関の種類 | パターン | 例 |
|---|---|---|
| 正の相関 | 一方が増えると他方も増える | 気温が上がるとアイスクリームが売れる |
| 負の相関 | 一方が増えると他方は減る | 気温が上がると暖房器具の売上が減る |
| 相関なし | 関係性が見えない | 身長と数学のテスト点数 |
相関の強さは 相関係数 (-1 〜 +1) という数値で表されます。+1 に近いほど強い正の相関、-1 に近いほど強い負の相関、0 に近いほど無相関です。
注意: 相関があるからといって因果関係があるとは限りません。 例えば「アイスの売上」と「水難事故」には正の相関がありますが、これは両方とも「気温」という別の要因 (交絡因子) によって引き起こされているだけで、アイスを食べると溺れるわけではありません。
試験に出る!
頻出散布図は試験頻出。「2 変数の相関を見る」「点で表す」「相関係数で強さを示す」 の 3 点を押さえましょう。さらに「相関 ≠ 因果」の注意も応用問題で問われます。
回帰分析 は、散布図に表れた相関関係を 直線 (回帰直線) や曲線 で数式化し、過去データから将来を予測する手法です。
例: 過去 12 か月の広告費 (x) と売上 (y) の散布図に回帰直線 y = 2x + 100 が引ければ、来月の広告費を 50 万円にしたときの売上は 2 × 50 + 100 = 200 万円と予測できます。
回帰分析は意思決定や経営計画の立案で広く使われ、最近では機械学習の基礎でもあります。
ヒストグラム は、データを一定の区間 (階級) に分け、各区間に属するデータの個数を棒グラフで表したものです。データの ばらつき・分布の形 を視覚的に把握できます。
通常の棒グラフとの違いは、横軸が 連続的な数値範囲 (例: 身長 150-160cm, 160-170cm…) であることです。一般的な棒グラフは横軸が カテゴリ (例: 商品 A・B・C) になります。
レーダーチャート は、複数の項目を放射状の軸に並べ、各項目の値を結んで多角形を描くグラフです。全体のバランス を一目で把握できます。
例: 自社製品 と 競合 A・B の性能を「価格」「品質」「サポート」「機能数」「省エネ性能」の 5 項目で比較する場合、レーダーチャートにすると「自社は機能数で劣るが省エネ性能で勝る」のような全体像が直感的に分かります。
QC 七つ道具との関係
本節で扱った パレート図・散布図・ヒストグラム は、品質管理で使われる QC 七つ道具 にも含まれます (他は 特性要因図 (フィッシュボーンダイアグラムとも呼ぶ。原因と結果の関係を魚の骨のように図解)・管理図 (工程が安定状態にあるかを判定)・チェックシート (データの記録・集計用)・層別 (データを共通点で分けて分析))。QC 七つ道具については ch07 (プロジェクトマネジメント) の品質管理節でまとめて学びます。さらに、アイディア発想に使う 新 QC 七つ道具 (親和図法・連関図法など) は次の節 ch01-sec06 (意思決定と問題解決) で扱います。
ポイント
業務分析の代表ツールは パレート図 (重要項目を特定)・散布図 (相関を見る)・ヒストグラム (分布を見る)・レーダーチャート (バランスを見る)・回帰分析 (将来予測) の5つ。パレート図を使った重要度ランク分けを ABC 分析 といい、原価計算の Activity-Based Costing とは別物。散布図では正の相関・負の相関・相関なしの3種類と、相関係数 (-1〜+1) を押さえる。「相関 ≠ 因果」の注意も頻出。
用語
経営者は限られた情報の中で意思決定を下し、組織として問題を解決していかなければなりません。本節では、IT パスポートで頻出する 定量的な意思決定 (期待値) と アイディア発想・問題整理の手法 (ブレーンストーミング・新 QC 七つ道具) を扱います。
期待値 は、結果が確率で決まる場合の平均的な値を表す指標です。経営判断では「どの選択肢の見込み利益が最大になるか」を比較するために用いられます。
期待値 = Σ (値 × 確率)
身近な例として、サイコロを 1 回振ったときに出る目の期待値を計算してみます。
期待値 = 1 × 1/6 + 2 × 1/6 + 3 × 1/6 + 4 × 1/6 + 5 × 1/6 + 6 × 1/6
= (1 + 2 + 3 + 4 + 5 + 6) ÷ 6
= 3.5
経営判断の例: 新商品 A を販売したとき、確率 60% で利益 1,000 万円、確率 40% で損失 500 万円が見込まれるとします。
期待値 = 1000 × 0.6 + (-500) × 0.4 = 600 - 200 = 400 万円
商品 B の期待値が 200 万円なら、A のほうが見込み利益が大きいので A を選ぶ、という意思決定ができます。
試験に出る!
頻出期待値の計算問題は IT パスポート頻出。期待値 = Σ (値 × 確率) の式と、すべての確率を足すと 1 になることを押さえれば解けます。なお、ch07 (プロジェクトマネジメント) で扱う 期待金額価値 (EMV) は本節の期待値をリスク管理に応用したものです。
ブレーンストーミング は、複数人で集まって自由にアイディアを出し合うことで、斬新で画期的な解決策を生み出す発想技法です。経営戦略の立案・問題解決の打ち手の検討・新商品企画など、幅広い場面で使われます。
効果を出すには、以下の 4 つのルール を守ることが重要です。
| ルール | 内容 | 狙い |
|---|---|---|
| 批判禁止 | 他人のアイディアを否定しない | 自由な発言を促す |
| 質より量 | 質を気にせず多くのアイディアを出す | 確率論的に良案が出やすくなる |
| 自由奔放 | 突飛なアイディアも歓迎する | 常識の枠を外して発想する |
| 便乗 OK | 他人のアイディアに乗っかって発展させる | 集団のシナジー効果を生む |
この 4 ルールを守ることで、個人では思いつかないアイディアが集団の中から生まれてきます。
試験に出る!
重要!頻出ブレーンストーミングの 4 つのルール は IT パスポート最頻出論点の 1 つです。「批判禁止」「質より量」「自由奔放」「便乗 OK」をセットで覚えましょう。「批判して質を高める」のような選択肢は引っかけです。
ブレーンストーミングなどで集まった 言語データ (アイディアや意見) を整理・分析するために用いられるのが 新 QC 七つ道具 です。前節の QC 七つ道具が 数値データ を扱うのに対し、新 QC 七つ道具は 言語データ を扱う点が大きな違いです。
IT パスポートで特に頻出するのは次の 3 つです。
| 手法 | 用途 | イメージ |
|---|---|---|
| 親和図法 | バラバラのアイディアを似たもの同士でグループ化し、整理する | カードを並べてグループ分け |
| 連関図法 | 複雑な原因と結果の関係を矢印で図解し、根本原因を見つける | 原因と結果のネットワーク図 |
| 系統図法 | 目的を達成する手段を階層的に展開する | ツリー構造 |
その他の新 QC 七つ道具にはマトリックス図法・マトリックスデータ解析法・PDPC 法・アローダイアグラム がありますが、アローダイアグラムは ch07 (プロジェクトマネジメント) でスケジュール管理の文脈で詳しく扱います。
QC 七つ道具と新 QC 七つ道具を混同しない
QC 七つ道具 (sec05 で扱った散布図・パレート図・ヒストグラム などの数値データ用ツール) と、新 QC 七つ道具 (本節の親和図法・連関図法 などの言語データ用ツール) は別物です。試験では「親和図法は数値データを扱う」のような選択肢が引っかけとして登場します。「新 QC = 言語データ」 と覚えましょう。
試験に出る!
頻出新 QC 七つ道具のうち、IT パスポートでよく問われるのは次の 3 つ。
手法名と用途のセットで覚えると効率的です。
ポイント
意思決定では 期待値 (Σ 値 × 確率) で見込み利益を比較する。アイディア発想には ブレーンストーミング を使い、4 つのルール (批判禁止・質より量・自由奔放・便乗 OK) を守ることが重要。集まった言語データの整理・分析には 新 QC 七つ道具 を使い、特に 親和図法 (グループ化)・連関図法 (因果関係)・系統図法 (目的-手段) が頻出。QC 七つ道具 (数値データ) と新 QC 七つ道具 (言語データ) の対比を押さえる。
用語
ここまでの節では、定性的な経営管理 (PDCA・組織) や財務的な分析 (損益分岐点) を扱ってきました。本節では、数学的・統計的に最適解を求める 一連の手法を学びます。
対象は次の 2 領域です。
| 領域 | 略称の意味 | 代表的な手法 |
|---|---|---|
| OR (Operations Research) | 数学的・統計的に最適化を行う問題解決手法の総称 | 線形計画法・待ち行列理論・在庫管理 |
| IE (Industrial Engineering / 経営工学) | 工場や事務作業のムダを削減し効率を高める手法 | 動作研究・時間研究 |
試験では「ある問題に最も適する手法はどれか」「計算式を使って数値を求めよ」といった形で出題されます。
線形計画法 は、複数の制約条件のもとで利益や生産量を最大化 (または費用を最小化) する組合せを求める手法です。1 次式の制約 + 1 次式の目的関数 で構成される問題に対して、最適解を求めます。
例題: ある工場で製品 A と B を生産している。製品 A は 1 個あたり利益 3,000 円・製造に 2 時間、製品 B は 1 個あたり利益 2,000 円・製造に 1 時間かかる。1 日の稼働時間が 8 時間のとき、利益を最大化するには A・B をそれぞれ何個作るべきか?
変数: 製品 A の生産数 = x、製品 B の生産数 = y
制約: 2x + y ≤ 8 (稼働時間)、x ≥ 0、y ≥ 0
目的関数: 利益 P = 3,000x + 2,000y を最大化
上の制約のもとで P が最大になるのは、(x, y) = (0, 8) のとき P = 16,000 円 (B のみ 8 個生産) と、(x, y) = (4, 0) のとき P = 12,000 円 (A のみ 4 個生産) を比較すると、B のみを 8 個 作るのが最適です。
線形計画法は、限られた資源 (時間・原材料・予算など) を最適配分する典型的な手法で、生産計画・輸送計画・予算配分などで使われます。
試験に出る!
頻出線形計画法 は「1 次式の制約 + 1 次式の目的関数」「制約のもとで最大化・最小化」がポイント。生産計画・輸送計画など、限られた資源の最適配分問題で使われます。
待ち行列理論 は、サービスを待つ列の長さや待ち時間を数学的に分析 する手法です。レジや窓口に客が到着する間隔 (到着率) と、サービスにかかる時間 (サービス率) から、待ち行列の平均長や平均待ち時間を予測します。
適用される場面は次のとおりです。
| 場面 | 待ち行列を分析する目的 |
|---|---|
| 銀行・スーパーのレジ | 窓口数を増やすべきか判断 |
| コールセンター | オペレータ数の最適化 |
| サーバ負荷分散 | サーバ台数の見積もり |
| 高速道路の料金所 | レーン数の決定 |
試験では「待ち行列理論が適用される場面はどれか」のように、適用領域を選ぶ問題が頻出です。詳しい計算 (M/M/1 モデルなど) は ch09 (基礎理論) で扱います。
企業の在庫には保管コストと欠品リスクが付き物です。在庫を 適切な量で発注し、欠品せず保管コストを最小化する ためのモデルを学びます。
経済的発注量 (EOQ: Economic Order Quantity) とは、1 回あたりの発注費用と保管費用の合計が最小 となる発注量のことです。発注量を増やせば発注回数は減りますが在庫が増えて保管費用が膨らみ、減らせば発注回数が増えて発注費用が膨らむ。この トレードオフが釣り合う点 が EOQ です。
試験では概念 (発注費用 + 保管費用 = 最小) を問う問題が頻出。具体的な計算式 (Wilson の公式) は IT パスポート範囲外です。
発注点 とは、在庫量がここまで減ったら次の発注をかける という基準量のことです。発注してから商品が届くまでの リードタイム の間にも消費が続くため、欠品を防ぐには発注タイミングを正しく決める必要があります。
発注点 = リードタイム × 1 日あたりの平均消費量 + 安全在庫
例: 1 日平均 10 個消費、リードタイム 3 日、安全在庫 5 個の場合
発注点 = 10 × 3 + 5 = 35 個
在庫が 35 個に減った時点で発注すれば、リードタイム中の 30 個の消費 + 5 個の安全在庫を確保できます。
試験に出る!
頻出EOQ (経済的発注量) = 発注費用と保管費用の合計が最小 になる発注量。発注点 = リードタイム × 平均消費量 + 安全在庫。発注点の計算問題は IT パスポートで頻出です。
IE (Industrial Engineering / 経営工学) は、工場や事務作業の ムダを科学的に分析・削減して効率を高める 手法群です。20 世紀初頭にテーラーが提唱した「科学的管理法」を起源とし、現代でも生産現場や業務改善で広く使われます。
代表的な手法は次のとおりです。
| 手法 | 内容 |
|---|---|
| 動作研究 | 作業者の動作を観察・分析し、ムダな動きを排除して作業手順を改善する |
| 時間研究 | 各作業に標準時間を設定し、作業効率の評価や標準化に使う |
| 稼働分析 | 機械や作業者の稼働率を測定し、遊休時間を特定 |
IE の核心は「現場の動きを定量化し、ムダを見える化する」ことです。データに基づいて改善するため、PDCA や QC 七つ道具と組み合わせて使われます。
ポイント
OR (Operations Research) は数学的・統計的に最適解を求める手法。線形計画法 は 1 次式の制約のもとで最大化・最小化を求める。待ち行列理論 はレジ・窓口・サーバなどの待ち時間を分析。EOQ (経済的発注量) は発注費用と保管費用の合計が最小となる発注量、発注点 はリードタイム × 平均消費量 + 安全在庫。IE (経営工学) は動作研究・時間研究・稼働分析でムダを科学的に削減する手法群。
用語